劇場のリターンとして日本酒を提供するのはなぜなのか。今回の企画の経緯を、SakeBottlers株式会社の代表である鈴木将之が振り返ります。
-企画の発端はなんだったのでしょうか。
鈴木:鶴めいホール設立プロジェクトの関係者と縁があり、劇場設立記念の日本酒をプロデュースしてもらいたいという依頼がありました。日本の文化として日本酒と伝統芸能は通じるものがあります。どちらも古来からの積み重ねを守りつつも新しい取り組みをすることで発展をしてきたものです。今回の新劇場の設立記念、ハレの日のお酒ということで、面白い取り組みができそうだということでお受けすることにしました。
また、弊社ブランド「HITOMAKU」の意味は、様々なシチュエーションや自分の感情の状態に合わせて気軽に日本酒を飲んでもらいたい。映画や舞台のシーンのような、様々な「一幕」になぞらえて日本酒を提供する、というものであるため、まさに舞台のためのお酒はぴったりだったのです。
なお、「HITOMAKU」は、これまで日本酒缶のみをリリースしていますが、今回は格式が必要であるため、瓶での提供をすることとしました。缶は手軽さはあるものの、残念ながら格の印象という点では瓶にまだ劣ります。
-企画の方向性が決まってから、具体化するまでにはどのようなアイディアや行動があったのでしょうか。
鈴木:伝統芸能の劇場にふさわしいテーマは何かと考えました。弊社の日本酒はテーマを決め、どんなシチュエーションで飲むかを想定し、それに沿った味やラベルデザインを決めていきます。その味を造ることができる蔵を探し、委託情報をお願いする日本酒蔵を決定しています。今回のテーマは伝統を守りつつも、明るい未来を創るための劇場ということで「再生(REBORN)」としました。
次に飲むシチュエーションです。ハレの日の酒であり、こけら落としのふるまい酒でもあります。また、おみやげでもってかえり、家で飲むことで「新しい良い劇場だったな」と振り返られ、飲んだ人が劇場に期待を込められる。
そのため、和を感じつつ華やかな花柳界をイメージできる味が必要です。華やかな香り、甘さとシャープさ、上品さ(華やかすぎない、甘すぎない)、重さよりも軽さ。この味の実現と、何よりも「再生(REBORN)」を体現できる蔵にお願いしたいと考えました。
そこで白羽の矢が立ったのが、茨城県の結城酒造です。
-結城酒造に依頼した理由はなんでしょう。
鈴木:結城酒造は、昨年5月火災で蔵が全焼しました。けが人はいなかったものの、江戸時代に建てられた国の登録有形文化財の蔵2棟をはじめ、酒造りの設備のほとんどが焼けてしまいました。しばらくは結城酒造での酒造りはできない。そんななか、かねてから交流があった北海道 三千櫻酒造のはからいで、浦里美智子杜氏が三千櫻酒造に行き、今期は三千櫻酒造の設備を使って結城酒造の新酒を仕込んでいます。まだ時間はかかりますが、「茨城県結城市の」結城酒造は新しい姿で復活するはずです。
まさにテーマに合う酒蔵でした。
弊社商品のHAVEFUN REDは結城酒造に委託醸造している縁もあり、さっそく浦里美智子杜氏に連絡、快諾いただきました。
テーマ、シチュエーションや味の方向性を伝え、酵母や醸造方法を検討。酵母の選定は議論がありましたが、2種類の酵母をブレンドすることで上品さと華やかさの表現を狙っています。2023/1/22より仕込みが開始しています。
浦里美智子杜氏からは以下のコメントをいただいています。
『「日本の伝統」というワードは我々が携わっている「日本酒造り」にも通ずるものがあります。先人の築いた大きな文化を我々は守り、時には攻め、多くの方に伝えていきたいと思っております。今回、日本酒という形で結城酒造も携わらせていただくこととなりました。
使用するお米は「酒米として最古」と言われる「雄町米」を無農薬栽培したもの。
大吟醸クラスの50%まで磨き上げて、今回のプロジェクトのために仕込むお酒となります。
日本の伝統でもある吟醸造りで最高のお酒を醸せたらと、このプロジェクトの進行と同時にわくわくしております。情緒ある街に、日本の素晴らしき文化が建ち、多くの方々が感銘を受けるそんな空間になること、文化を生で触れ、感じられる空間であること。
劇場の歓声と盛況を心より応援しております!』
伝統芸能の「再生(REBORN)」を祝う酒を、ぜひ味わってください!