本日、田中刑事が30歳の誕生日を迎えます。ファンの方に、公式から田中の最新インタビューをプレゼントいたします。せっかくなので、お誕生日についてや30代の抱負も訊いたのですが……特に言うことはないとのことでした (笑)
NHK杯のアンバサダーや演技についてのお話を中心に。
■NHK杯アンバサダーを担当して
アンバサダーとして大変なのは、それはもう一日が長いことです。男子の公式練習が始まる前ぐらいから会場に入り、全競技が終わるまでいますね。会場のアナウンス映像は運営側からいただいた仕事ですけど、もう3年目なので、それ以外のものは自分たちで探さないといけない。
――NHK杯の会場では、観客への注意喚起として、アンバサダーの三人が出演するアナウンス映像が流されます。毎年趣向が凝らされて、今年は束帯(そくたい)を着用し、高い烏帽子(えぼし)のせいで、後ろの席の宮原知子さんと本郷理華さんの視界を遮ったり、瓶底メガネをかけて会場を逃げ回ったりと、ユーモアたっぷりの映像が話題を呼びました。
あのアナウンス映像は、運営側に映像の編集をするのが上手な方がいらっしゃって。僕らは前日に入るんですけど、本当に前日に説明を受けて、その場で撮って、翌日のためにすぐ編集しています。
選手への対応に関してはだいたいもう流れが決まってきていて、まずは試合の前は避けている。だから試合が終わるまでは、それ以外のことをやっています。たとえば会場のいろんな場所を撮りにいって紹介できるところを探したり、プレゼントコーナーだったり、そっちの関連のことをやっていますね。
――NHK杯では、慣例として試合が始まる前に、アンバサダーが観客席に現れ、観客に直接プレゼントを渡すサプライズ企画が行われます。どうやってあげる人を決めているのでしょうか。KEIJIバナーを振るともらえるわけでもなさそうでしたが……。
「あ、この人にしよう」と。凄くアピールをしてくれてるので、選ぶのは大変です。
――アンバサダーには、試合終了後に選手たちに話を訊き、Instagramで配信するという役割があります。選手ひとりひとりに丁寧にインタビューをする様子が大変好評ですが、質問するにあたってコツもあるようです。
メディアもたくさん入っていますし、選手たちはインタビューをたくさん受けています。真面目な部分は、他でしっかり聞けると思うので、むしろそういう部分はあまり訊かないようにしている。テレビでは放送されないようなことを僕らはやる。ここでは試合の終わったあとの、「選手の素顔」を見せられるといいかな、と。良かったら一緒に喜んだり、悪かったら「次がんばろう」って言ってあげることですね。
知り合いと会う感じなんです。僕は、特段インタビュアとしてはやっていなくて、知り合いとして接しているだけです。だから、動画を撮っているときは何も考えていないです。 囲み取材だったり、いろいろまわってきて最後に訊くので、たぶん疲れてるし、そんなに長くいさせてもしんどいと思うので、なるべく簡単に話を訊いています。喜んでいる感じを、「素の感想」を話してもらえればと思っています。
――NHK杯の初日の夜には、ラジオのNHKニュースで、演技や表現について解説をしました。「伝えようとする何か。振付で私はこれを見せたいという想い。ただ大きく動くのではなく、動きに意味を持たせる」などが印象に残りました。
ちゃんと演技に感情が出て、それが観ている側にも伝わる――演技を技術的に、どう表現するかだけでなく、感情的に滑れている。そういった部分を僕は見ていて楽しいですし、競技大会ならではの凄さだと思います。
■敵役を演じて
――NKH杯エキシビションでは、昨年に続き、アイスショー「ファンタジーオンアイス」で滑った人気コラボを演じました。今年は、 “BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)” (歌:西川貴教)の曲に乗せて、『逆襲のシャア』でした。
昨年のNHK杯のエキシビションで演じた『アップル』も、今回の『逆襲のシャア』も自分で申し出ました。ファンタジーが終わったくらいから、やりたいなというのはありましたね。
ファンタジーのときとは振付が全然違うんですよ。冒頭アンサンブルが滑っていた部分から、振り付けをつけていただきました。
NHK杯のエキシビション用に5分から3分間に編集し直しました。 演技時間が短くなった分、宮本賢二先生に手直ししていただき、ブラッシュアップをしたので、今回のほうもかなりハードなプログラムでした。
僕のプログラムは、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年公開)という映画の曲なので、振り付けをするにあたって、賢二先生には映画の話をしました。映画の内容と、どっち側を演じるか。タイトル通りで行こうと。衣装もそっちですし。
シャア・アズナブルの赤い軍服を
モチーフにした衣装をまとって
(写真/ヤンジャン・マオ)
『逆襲のシャア』だけでなく『ファーストガンダム(機動戦士ガンダム)』から全部見ました。面白かったです。
主人公は地球連邦軍のアムロなのでジオン軍は敵ではありますが、悪役でも悪でもない。善悪がわからない。ガンダムの他のシリーズを見たときもそうだったのですが、どちらにも正義がある。どちらが善か悪かを決めるのは難しい――といった内容で、そこに魅力を感じます。
――今回、ジオン軍の敵役シャア・アズナブルを演じています。冷徹な将校シャアは、当時、大人の男の理想形として爆発的な人気を誇りました。主人公の赤毛の少年アムロ・レイより、断然魅力的でした。どちらのキャラクターが好きですか? また自分はどちらのキャラクターに近いと思いますか?
僕はシャアとアムロはどっちも好きですね。自分がどちらのキャラクターかはわからないですけど……。
今回は作品の魅力を届けるというよりは、「シャアを知っている人に届いて欲しい」と思って滑っています。アニメ作品のファンに伝わってほしいと思ってるので、その作品が好きな人が見たときに「やっぱり違うな」って思われるのが一番怖いです。
「誰にでも伝わるよう」によりも 「わかる人にちゃんと伝わる」。 「熱をもってやってるな」って思われるほうが嬉しいです。
■全体のための細部
――自分のスケートのどういったところに特に注目して見てほしいでしょうか。来年の予定や何か考えているプロジェクトがあれば教えてください。
パッと見てここというより、全体的に何をやっているのかを見てほしい。曲だったり、ジャンプもスピンもステップも振り付けも含めて、全体を見てほしい。そのために細部にまで意味を持たせている。
来年はまず、『オペラ座の怪人』を、1月のプリンスアイスワールド長崎公演で再演する予定です。「プロジェクト」というほどではないのですが、プログラムのことや、今後の仕事についてはいつも考えています。
いろんな先生に振り付けてもらったら、自分はどうなるんだろうと思っていて、それを知りたくて、いろいろな先生に振り付けてもらっています。プログラムの方向性は未定ですが、来年も新作を2作品くらい用意するつもり。振付の先生はまだ内緒です。まずは、振付の前に曲を探したいなと。
お誕生日おめでとうございます!