
国宝・二王門をくぐる初詣の様子。毎年、約10万人の参拝者でにぎわいます。
道後温泉の近くにある四国霊場第51番札所の石手寺が、文化財の修復などに向けたクラウドファンディングをスタートします。
石手寺は、鎌倉時代から受け継がれ国宝に指定されている二王門や、本堂、鐘楼、三重塔などの重要文化財、そして四国遍路の開祖とされる衛門三郎の伝説が残る寺で、年間を通して多くの参拝者が訪れます。
3年後の2028年に創建1300年の節目を迎えるのを前に、文化財を修復するプロジェクトを立ち上げました。
集まったご支援は、およそ90年ぶりとなる三重塔の屋根のふき替え工事や、すでに修復を終えた鐘楼の工事費用(総事業費約1億7,400万円のうち、石手寺が負担する1,740万円)に充てます。
また、ふき替え工事で外した三重塔の屋根瓦といった返礼品の発送費用などにも活用します。
Yahoo!ニュースでご紹介頂きました。
なぜ「元祖遍路」と言われるのか

それは、四国遍路の原点とされる「衛門三郎伝説」が石手寺に深く息づいており、遍路の本質である「再生」の物語を、今も伝え続けているからです。
衛門三郎は、四国遍路の開祖と伝えられる人物です。伊予の国(愛媛県)に住む裕福な豪族でしたが、強欲で人情に欠けた性格でした。
ある日、弘法大師が屋敷の前で托鉢をした際、三郎は竹ぼうきで鉢を叩き壊して追い返してしまいます。
その後、八人の子どもたちが次々と亡くなり、自らの過ちを悟った三郎は、大師に許しを乞うため、四国遍路の旅に出ます。二十一度目の巡礼で、十二番札所・焼山寺の麓にある杖杉庵で倒れたとき、大師が現れ、「望みはあるか」と尋ねました。三郎は「来世も河野家に生まれ、人の役に立ちたい」と答え、静かに息を引き取ります。大師は「衛門三郎」と刻んだ石をその手に握らせました。
翌年、河野家に生まれた男の子は右手を固く握っていました。寺で祈りを捧げると手が開き、中から「衛門三郎」と記された石が現れたのです。これを納めた寺は「石手寺」と名を改め、今も「再生」の物語を語り継いでいます。
石手寺宝物館に展示されている「衛門三郎伝説」の巻物。雪舟や種田山頭火の作品です。
三重塔・鐘楼について
三重塔について 
三重塔は、建立時期は不明ですが、鎌倉時代後期(1275~1332年)に再建されたとされる木造建築で、国の重要文化財に指定されています(明治40年〈1907年〉指定)。高さは約24.1メートルで、三重塔としては比較的大型であり、安定感のある美しいプロポーションが特徴です。昨年、テレビアニメ『サザエさん』のオープニングにも登場しました。
塔は三間三重塔婆、本瓦葺の形式で、和様の建築技法を用い、各層とも二軒の軒を備え、平行繁垂木(へいこうしげたるき)構造が見られます。円柱の上には三手先の組物が置かれ、初重内部には四天柱(してんばしら)や来迎壁、須弥壇が設けられ、釈迦三尊像が安置されています。また、内壁には真言宗八祖図、天井や柱にも彩色が施されていますが、現在は褪色や剥離が進んでいます。
建築的には、相輪(そうりん)が塔全体の約3分の1を占めるやや長めの造りとなっており、心柱が塔の上層部を貫く構造は、平安末期から鎌倉期にかけて用いられたものです。全体として、装飾を抑えつつも優美で力強い印象を与える、鎌倉後期の特徴をよく残す塔です。
通常は非公開ですが、毎年12月8日(お釈迦様の成道会)には一階が開放され、内部を拝観することができます。今後は、内壁画の公開整備や内部の整理、塔内からの登楼、拝観環境の向上などが計画しています。
1927年に撮影:三重塔改修に携わった関係者の方々。
この塔は昭和10年(1935年)に解体修理が行われており、現在も2026年1月竣工予定で屋根の保存修理工事中です。
鐘楼について 
鐘楼は、室町時代の1333年(元弘3年)に再建された木造の貴重な建築物で、国の重要文化財に指定されています。建物は桁行三間・梁間二間、屋根は入母屋造で檜皮葺。下層には「袴腰(はかまごし)」と呼ばれる覆いがあり、鎌倉時代以降の鐘楼建築に見られる独特の様式を示しています。
内部には、1251年(建長3年)に鋳造された銅鐘(同じく重要文化財)が吊られています。この鐘は現在撞かれていませんが、歴史的価値が非常に高く、国宝に指定される可能性もあるといわれています。
鐘楼は、和様建築の美しい意匠と均整のとれた構造が特徴で、当時の建築技術や美意識を今に伝える重要な文化遺産です。
過去には、1958年(昭和33年)と1994年(平成6年)に屋根の葺き替えや部分修理が行われました。今回の保存修理では、2025年(令和7年)2月に屋根の修理が完了しています。
お返しの品一覧
ご支援いただいた皆さまへ、感謝の気持ちを込めて寄進額に応じた特別なお返しの品をご用意しています。
■ 感謝動画メール
■ 感謝状
■ オリジナル御守り(三重塔の瓦を使用)
■ 三重塔・鐘楼ポストカード
■ オリジナルTシャツ
■ 三重塔の取り外し瓦(御朱印付き)
■ 般若心経祈願動画(太鼓付き)
■ 足場を使った三重塔特別見学
■ HP掲載
■ 寄進板設置(参道沿い/小・中・大・特大)
■ 景観木・景石の奉納
くわしくは、後ほどの「お返しについて」の章をご覧ください。
全6回のショート寄進 !目的・時期に合わせてご支援可能

2028年に創建1300年という大きな節目に向けて、各回ごとにテーマと目標を掲げた、全6回の寄進プロジェクトを立ち上げました。各回の趣旨にあわせた、限定のお返しの品を用意しています。一度の参加でも、全部にご参加いただくことも可能です。
スケジュールは以下の通りです。
ショート寄進 計6回(2025年5月〜2028年2月末)目的一覧
第1回(2025年5月〜7月末)
「三重塔・鐘楼の修復プロジェクト」
内容:国指定重要文化財である三重塔・鐘楼の修復(すでに工事進行中)
目的:創建1300年の節目にふさわしい出発点として、信頼と関心を集める象徴的なプロジェクト
名前を残せる場所:三重塔・鐘楼近辺エリア
第2回(2025年11月〜2026年2月初旬)
「手放すことで、見えてくるプロジェクト(仮)」
内容:境内全域における老朽建築や不要物品の撤去・整理
目的:「余白」を生み出すことで、次の整備や景観再生を可能に。境内の安全性・視認性向上にもつながる基盤づくり
名前を残せる場所:お茶堂
第3回(2026年5月〜7月末)
「再生(清掃)の拠点をつくるプロジェクト(仮)」
内容:清掃作業の拠点として安養閣を再建築(清掃用具保管・ゴミ置き場・倉庫、職員・ボランティアの休憩所も整備)
目的:日常の寺務管理体制を根本から整え、持続可能な運営の礎を築く
名前を残せる場所:大師堂
第4回(2026年11月〜2027年2月初旬)
「境内全域の庭木・植栽整備プロジェクト(仮)」
内容:境内全域の庭木の剪定、植栽の調整など、四季を感じる自然景観の再整備
目的:木々がしかるべき場所で、のびやかに生き生を全うできる環境を整備。SNS映えや観光誘致にもつながる景観づくりを通して、参拝者の心に残る体験を提供
名前を残せる場所:訶梨帝母天堂
第5回(2027年5月〜7月末)
「祈りの場を心地よくプロジェクト(仮)」
内容:お茶堂・阿弥陀堂・大師堂・回廊沿いの施設群など、日常的に使用される建物の修復・整備
目的:参拝体験の向上と利便性の改善を通じて、地域の信仰と交流の場としての価値を高める
名前を残せる場所:阿弥陀堂
第6回(2027年11月〜2028年2月初旬)
「防災・治水によって文化財を守るプロジェクト(仮)」
内容:境内全域における火災設備、排水設備などの設置・更新
目的:40年以上前の防災設備を更新し、治水対策を施すことで、大切な文化財を次代へ守り継ぐ
名前を残せる場所:二王門
なお、これとは別に、境内全体の整備を目的とした「ロング寄進プロジェクト」も実施しています。こちらでは、定番となっている人気のお返しをご用意しています。
応援メッセージ
胡 光(えべす ひかる)
愛媛大学四国遍路世界の巡礼研究センター長/法文学部教授
四国遍路開創1200年記念の年にあたる2014年には、四国4県で行う記念展覧会に合わせて、石手寺の総合調査をさせていただきました。全国的にも珍しい「大勝金剛図」や、愛媛県指定文化財の菩薩・天童面が描かれた練り供養絵巻の発見など大きな成果を上げ、同寺の歴史や伝統文化のすばらしさを再確認しました。まもなく創建1300年を迎える同寺には、国宝二王門をはじめ国指定文化財の建造物が多数存在します。そのひとつ、重要文化財三重塔の足場に前御住職と登り、相輪の穴を確認したことを昨日のことのように思い出します。貴重な歴史を刻んだ建造物を伝えていくには、多くの皆様のご理解とご協力が必要です。どうか、四国遍路開創の歴史を伝える石手寺の整備に、ご支援賜りますよう、お願いいたします。
小野龍光さん
悩ましさや苦しさにぶつかりながらも、なぜ生きるのか、どう進めば救われるのか。
その答えを求めさまよい、歩んできた道のうちに、答えは生まれていく。
そうした悩みながらも前に進むという生き様は、次の世代で悩ましく生きる人々へ、希望として紡がれていく。
「最初のお遍路さん」として石手寺に伝説としてのこる衛門三郎の生き様は、このような教えを、祈りとともに石に託し、私たちに手渡してくれている。石は、その希望の姿であると感じてます。
そうして希望を手にし歩き続けてきたたくさんの先人たちの歩みが、石手寺とお遍路の文化を、1000年以上もの長きにわたり現代にまで運んでくれた道のりとなってきたのでしょう。
物が豊かにあふれる現代でも、生きる悩ましさはなくなりません。
ですが、私たちは、衛門三郎はじめたくさんの先人たちから手渡されてきた「善き未来への希望」という石を手にできている。
そうして手渡された希望を勇気に変えて歩んでゆけば、私たちにも明るい道は拓けてゆき、また次の誰かの希望へと手渡していく側にまわってゆけるのでは。
この先の1000年も、人々が善き未来を祈り前へ進み、その希望と勇気を次の人々へと手渡していきますよう。
心の火を灯し続ける姿が続きますよう。
それを支えるお遍路という文化、その一つの象徴としての石手寺も、守り紡がれていきますよう。
今回のプロジェクトは、そんな想いと祈りが集まる機会になりますよう。
その恩恵を頂いた小さき一人として、ささやかながら願い祈っております。


石手寺の象徴である三重塔と鐘楼。長年の風雨にさらされ傷んだ屋根や、三重塔の相輪(頂上の装飾)、鐘楼の木部を、葺き替えや部分修復によって整えます。
重要文化財としての価値を守りながら、後世へと受け継いでいきます。

ドローンで撮影した石手寺の伽藍
このプロジェクトは、先代住職・加藤俊生の強い願いから始まりました。2020年、ドローンで三重塔を撮影していた際、相輪(仏塔の頂上にある飾り)に穴が空いているのを偶然発見しました。

雨水が侵入して心柱が腐食すれば、塔全体が危険な状態になります。「これは非常にまずい」と感じ、国の支援を待たず、すぐに自費で足場を設置し調査を行いました。
三重塔の相輪。大きな穴が空いている。
当初は応急処置も検討していましたが、間近でみると想像以上に状態が深刻であることが判明。抜本的な修復が必要となりました。

鐘楼の屋根も同様に傷みが進行しており、修復申請の準備を進めていた矢先、2021年、加藤住職が63歳の若さで志半ばに急逝。

その後、コロナ禍の影響で予算が確保できず、計画は先延ばしとなっていました。
そうした中、2024年になってようやく補助金が決定し、修復工事が本格的に始動しました。
修復費用は約2億円。さらに、修理後も貴重な文化財の維持や管理のための費用が必要です。
国指定の文化財は“国の宝”です。先人たちが守り継いできた三重塔と鐘楼を、次の世代へと受け渡すことは、今を生きる私たちの使命だと考えています。


お寺と松山市教育委員会文化財課が中心となり、行政手続きや業者選定を進めてきました。
2024年夏より、文化財建造物保存技術協会による設計監修のもと、社寺建築の名門・田中社寺によって丁寧に修理が進められています。

三重塔は1935年以来、約90年ぶりの屋根葺き替えで、2026年1月末に竣工(完了)予定です。
元IT起業家・小野龍光さんとともに現地調査
日々、関係者との綿密な打ち合わせを重ねながら、安全かつ確実な修復作業に取り組んでいます。
本瓦の一部を解体し、調査をしている様子
職人さんたちが、横にならび、一つひとつ丁寧に檜皮を葺いている様子
鐘楼は1994年以来の修復で、2025年2月末に竣工(完成)しました。
三重塔は引き続き、瓦の葺き替え工事を進めています

皆さまからのご支援は、以下のような用途に大切に使わせていただきます。
・三重塔・鐘楼の修復工事費用
・返礼品の製作および発送費用

ご支援いただいた皆さまへ、感謝の気持ちを込めて以下の返礼品をご用意しています。
■ 感謝動画メール

ご支援への感謝を込めて、住職からの動画メッセージをメールにてお届けいたします。映像を通じて、石手寺とのご縁を感じていただければ幸いです。
■ 感謝状 
感謝を込めて感謝状をお届けいたします。お一人おひとりのお力添えが、石手寺の再生を支える大きな原動力となっております。
■ オリジナル御守り(三重塔の瓦を使用)

長年にわたり三重塔を風雨から守ってきた瓦のかけらを中に納め、仏さまの力を込めた加持を施した特別なお守りです。「再生」の文字を刻み、未来への願いとともにお届けいたします。
■ 三重塔・鐘楼ポストカード 
修復前の姿を収めた三重塔と鐘楼の写真を、美しいポストカードに仕立てました。時の流れと祈りの重みを感じていただける一枚です。
■ オリジナルTシャツ
石手寺オリジナルデザインのTシャツをご用意しております。日常の中で、ふとお寺とのご縁を感じていただける一着です。
カラーは白地に黒プリント。サイズ展開は以下の通りです。
S:小柄な方や女性向け
M:標準的な男女向け
L:やや大柄な男性や、ゆったり着たい女性向け
XL:大柄な方向け
XXL:よりゆったりと着たい方向け
※デザイン完成後、順次ご案内いたします。
■ 三重塔の取り外し瓦(御朱印付き)
修復により取り外された平瓦に、特別な御朱印を施したものをお届けいたします。時を超えた祈りの証として、お手元にお納めください。
■ 般若心経祈願動画(太鼓付き)

皆さまのご多幸を願い、太鼓の響きとともに般若心経をお唱えした祈願動画をお届けいたします。どうぞ心静かにご覧ください。
■ 足場を使った三重塔特別見学
三重塔の頂上部分
2025年11月、修復工事の期間中だからこそ実現する特別見学会を開催予定です。足場を活かし、新たに葺き替えた瓦や普段は見ることのできない三重塔の構造や細部を、間近でご覧いただけます。※開催候補日を追ってご案内いたします。日程等都合が合わず見学会に参加できない場合でもキャンセル、返金等は承れませんので予めご了承ください。
■ HP掲載

ご寄進者様のお名前を、石手寺公式ホームページにてご紹介いたします。広く感謝の意をお伝えするとともに、ご支援の記録として2025年9月1日〜2028年12月31日まで残してまいります(ご希望により掲載を辞退いただくことも可能)。
■ 寄進板設置(参道沿い/小・中・大・特大) 
まずは二王門前に、寄進者様のお名前を刻んだ「寄進板」を設置し、2028年夏以降には三重塔内部へ永年設置いたします。ご支援金額に応じて板の大きさが異なり、祈りとご縁を未来へとつなぐ証となります。

■ 景観木・景石の奉納

ご支援者様のお名前を、景観木や景石に刻み、石手寺の境内に永年奉納させていただきます。
1300年の歴史を歩んできたこの地に、「生きた意志」を刻む――未来へと受け継がれる、特別なご寄進のかたちです。

・2024年8月:三重塔・鐘楼の修復工事スタート
・2025年2月:鐘楼 修復完了
・2025年4月末:クラウドファンディング・広報開始
・2025年7月末:三重塔・鐘楼の寄進受付終了
・2025年11月:足場を使った三重塔特別見学会
・2026年1月末:三重塔 修復完了
・2026年4月20日(仮):三重塔・鐘楼の落慶式

第45代住職を務めております藤井俊良(ふじい・しゅんりょう)です。1300年という祈りの時間を刻んできた元祖遍路の石手寺。その象徴である三重塔・鐘楼を、先代が守り続けてきたように、今、私たちが未来へと手渡すときがやってきました。
国・県・市からの支援を受けながらも、私たち寺院としても責任を果たしてまいります。ともにこの“再生の歩み”を進めていくため、みなさまの温かいご支援を、心よりお願い申し上げます。

熊野山 石手寺
〒790-0852 愛媛県松山市石手2-9-21
TEL 089-977-0870